2016年7月29日金曜日

「日本の女性たちはもっと自由になっていい」話題の月経カップから見えたこと

画期的な生理用品として今話題になっている「月経カップ」。最長12時間装着でき、長時間のオペで生理のモレが気になる女性医師たちの間でも関心が高いアイテムです。コラムニストで淑徳大学客員教授の深澤真紀さんは月経カップを使ったことがある経験から、熊本地震の直後に「防災アイテムのひとつとして用意しておくべき。これまでいろいろな被災地を取材してきましたが、“こんな支援が欲しかった”で必ず上がるのが生理用品です」と力説。女性たちは生理のことをもっとオープンに話していいし、もっと自分の体のことを知るべきだといいます。そんな思いから米国の月経カップメーカー「スクーンカップ」の日本代理店・株式会社スクーンジャパン代表の浅井さとこさんとの対談が実現。月経カップの話から見えてきた、生理をタブー視する風潮や日本人女性たちの不毛な思い込みなどを指摘。鋭い切り口から浮き彫りになった“他人に振り回されない生き方論”にハッとさせられます。


月経カップを彼女に勧められる男

深澤:知り合いの男の子が、生理痛のひどい妹に「ピルを飲んだら」って勧めたところ、そこにいた家族の人たちはびっくりしてしまったそうです。日本の家庭は男子が妹にピルを勧められるレベルにはまだ至っていないんですよ。
浅井:私の会社で出しているスクーンカップという月経カップについても同じ。生理の話しは女の話題、男はそんなの聞かされたくないと思ってる人が多いんですけど、日本にはもっと自由に生理のことを語れる空気が必要だと思うんです。生理の辛さがよくわかって、彼女に月経カップを勧められるくらいの男がいるといいなあ。
深澤:確かに今の日本では生理のことがオープンにされない風潮がありますね。熊本の地震の後も、災害時に備えて月経カップのような生理用品に日頃から慣れているといい、というようなことをラジオ番組で言ったんです。そうしたら女性の生理の話は聞きたくない、という男性の反応がありました。男性が被災地で生理用品を配ってたら、自分はとてももらいに行けない、っていう女性も多かったり。もらわないほうが困ると思いますが。
浅井:生理の話しはまだまだタブーなんですね、日本では。
深澤:薬局で生理用品を買うと、それだけ紙袋に入れられるんです。包装袋に入れる前に、ですよ。それはいらない、と言うと驚かれます。包装袋もいらない、と私は言うんですが、もっと驚かれます。
浅井:人には見せてはいけないもの、と思われているんでしょうか。
深澤:小学校では林間学校の前に女子だけ集められてナプキンのあて方の講義なんて受けるわけですけども、そこでも男子は締め出しなんですね。他の国では洗面所の歯ブラシ立ての横にタンポンが普通に置いてあってもおかしくないんですが、日本だと普通の家庭でそんなことありえないみたいです。
浅井:生理に関連する性差の問題は他にもあります。例えば、スクーンカップは、すべての生理のある女性に、ってブランドとしては決して言わないんです。なぜかっていうと、トランスジェンダーの人たちがいるから。体は女のままで手術なんかしてなくても、心は男という人も多いです。だからそんな人たちを尊重する意味でも、スクーンカップは「生理があるすべての人たちに」っていうブランドのスタンスを取っているんです。
深澤:性差と言えば、「女は子宮で考える」なんてことが言われたことがありますが、そんなもん、子宮は考えるもんか、ですよね。
浅井:ははは。確かに。でも自分の子宮や膣のことをよく理解していない人は案外多い。
深澤:たとえば、処女膜のことを膣の全面に膜が張っているものだと思っているのは、男性ではなく女性にも少なくありません。あれはヒダ状の膜ですから、処女でもタンポンくらい問題なく使えるんです。スクーンカップも処女でもOKですよね。
浅井:もちろん処女の方、特にティーンエージャーにも多く使ってもらっています。欧米では、処女の定義はセックスを経験したかどうかによるもので、処女膜が破れたから処女じゃないなんてバカげたことは言いません。それにしてもとどのつまりは自分の体のことを知ることの大切さ。自分の体をよく知らないと、メンテナンスなんてできないですもん。自分の膣を鏡に映して見たことなんてないって人も結構多いですけれど。


女オンチ vs. 自分オンチ

浅井:自分のことを知るという意味でいうと、深澤さんの「女オンチ。女なのに女の掟がわからない」のご本がまず頭に浮かびます。最近拝読したんですが、すごく面白くて、読みながら何度も声に出して笑ってしまいました。共感できる部分も多かったです。「音姫」が最初に出た時、「何じゃこら」と思ったところやなんか。「女オンチ」でいる方がほんとは楽しいんですけどね。枠からはみ出てるってことだから。
深澤:日本女性って、あまり変な人がいないですよね。ルールがみんなコード化されていて、全体の偏差値は上がってきてるんだけど、みんな真ん中に寄っていて、平均的な感じ。とんでもない人があまりいないんです。
浅井:そんな意味では女オンチでいる方がいいと思う。ルールから外れている方が素敵。ベルトコンベアに乗っかって、みんなが型にはまっている中で、あの本にある考え方ができるのは素晴らしいと思います。
深澤:子供の時読んだ「いやいやえん」っていう童話、私はあのまんまなんです。イヤなものはイヤ、と言う。
浅井:これはイヤとはっきり言うことが大切ですよね。他の人に対しても、自分に対しても。
深澤:私は就活の時、メイクをしない、制服を着たくない、と決めてました。これだけは絶対イヤだと。自分のこれはイヤということを、しっかり持っておくのって大切です。日本人は誰からも好かれる人になることに重きを置きすぎているんじゃないでしょうか。嫌いな人から嫌われてもいいんです。むしろそれが大切なんです。嫌われないことをテーマにしたら、自分を見失ってしまうと思うんです。
浅井: そうですよね。それには、自分のことをもっとよく知ること。女オンチであって大いに結構だと思うんですが、自分オンチであってはいけない。自分オンチだと、自分のことを知らないから、変に自意識過剰になったり、逆に実力があっても自分に自信がなかったり。自分のことを等身大によく知ってあげて、その価値を認めてあげること、すべてはそこから始まるという気がします。



自分との距離の取り方を考える

浅井:深澤さんのご本を拝読して思ったのは、深澤さんがどんなに自分の女オンチぶりを書いていらしても、それが抵抗なく読めて、むしろ共感してしまえること。それはきっと深澤さんが物事や自分自身に対して、気持ちのよい距離を保っていらっしゃるからだと思うんです。
仏教の教えにもあるそうですが、例えば怒っている時に、その感情に飲み込まれないで、自分は今怒っている、怒っている、という風に傍観的に、俯瞰的に眺めると気持ちが静まるそうで、それはとても納得がいくことです。自分との距離がうまく取れなくて、自意識過剰になってしまう人が多いようですが、深澤さんの、あの冷静な距離の取り方は、トレーニングによるものですか? それとも天性?
深澤:若いときは褒められたいとか認められたいと思ってたんですが、その気持ちが減ってきたとは思います。というのも、他人が認めてくれる自分って、あんまり面白くない自分なんですよ。そんな時に自分の中にある特殊なものに目を向けることが大事だと思うんです。そんな意味ではガラパゴスになることはちっとも悪いことじゃない。日本はガラパゴスになっていくなんて言われてるけど、なるなら徹底してなればいい。カラパゴスにはそこにしかない生物がいる。それがとても面白い。カラパゴスの自分はそこにしかいないということに意味があるのでは。他人をうらやましいと感じるとしんどいかもしれないですね。他人からうらやましがられるのもしんどいかも。むしろうらやましがられない方がいいんです。
深澤:自分を肯定するために他に人を落とすようなことを言ったりするのは、本当に疲れてしまう。人をおとしめることによって自分は安心する、みたいな構造。これはしんどいかも。かつて「私は絶対ファストファッションなんか着ない」と豪語していたお洒落な女性たちは、自分の言葉に呪いをかけられてしまったために、今は言い訳しながら着る羽目になっています。そして私が名付けた「草食男子」という言葉が流行った時、若い男性を悪く言う人がいましたけど、あれはホメ言葉なんです。女性を抑圧しない男、そして 「女はこうあるべきだ」ということを思わない人たちなんですよ。だから彼らも男の役割というものに拘泥しない。そういう人が増えるのはいいことです。いろんな人がいていいのに。
浅井:確かに男の役割、女の役割にこだわらない人っていいですね。

 自分のトリセツを知ろう

深澤:そう、フラットに客観的に物事を捉えることはとても重要なんです。ところが女性って「自分探し」が好きなのに、「自分を観察する」ことをしない人が多いです。どこにいるのかわからない自分なんか探さなくていいから、今ここにいる自分を知った方がいい。たとえば「気圧が低いと頭痛がするな」と自覚することのほうが大事とかね。
浅井:自分のトリセツ(取扱説明書)を知ることって大切です。
深澤:「自分にご褒美」なんて言ってる人がいるけど、それよりもメンテナンスしろといいたい。デコレーションではなくてメンテナンス。自分のことを観察できるようになると、人のことも観察できるようになるんです。そしてそうすると大きな事故を起こさなくなる。
自分の限界を知っているから、勇気ある撤退ができる。己を守ることができるわけです。
浅井:勇気ある撤退! なんて素晴らしい言葉! ダメなものはダメ、とわかることが大切ですね。そしてイヤなものはイヤ、と言えること。我慢しないこと。我慢しないといえば、生理だって、そう。月経カップみたいな、モレやムレといった不自由な側面を避けることができる ツールがあるなら、まずは自分に合うかどうか、試してみるべき。我慢しなくてもいいことを我慢するとロクなこと、ないです。
深澤:多くの日本人は「やりたくないことをやらなくていい」ということも教えられてないから、結局「やりたいことをやる」こともできない。それでもって「石の上にも三年」なんて言ってる。人間関係でも無駄な労力使って疲れてる人って多いですね。応える必要のない期待に応えようとして頑張る。どうでもいい人にこだわる。
浅井:自分にとって大切なことや大切な人がハッキリすると、もっとスッキリするのに。
深澤:私が女性の先輩に教えてもらったマトリックスがあるんです(と言って図を描き始める)。縦軸に好きと嫌い、横軸に役に立つ人、立たない人、として縦軸と横軸を交差させて4つに区切るんです。そうすると(1)好きで役に立つ人 (2)好きだけど役に立たない人 (3)嫌い
だけど役に立つ人 (4)嫌いで役に立たない人、の4つに分かれますよね。みんなこの(4)嫌いで役に立たない人の期待に応えようとか、嫌われないようにしようとしてエネルギー使ってるんです。だから(1)好きで役に立つ人のために使うエネルギーが残ってない。
浅井:この考え方はシステマティックですね。
深澤:このマトリックスの肝はもう一つあって、(2)好きだけど役に立たない人よりは(3)嫌いで役に立つ人のほうが重要なことが多い、ということです。役に立つ人、立たない人というと打算的に聞こえるかもしれないけど、そうじゃないんです。
これを知らないと、結果的に誰からも嫌われて誰の役にも立たない人になる。エネルギーを効率よく使って、みんなもっと機嫌よくなれればいい。
浅井:それを気づかせてあげるのが深澤さんの仕事なのかもしれませんね。
ポジティブ志向、クソ食らえ。「輝く女性」になんかならなくていい。
深澤:輝いてる女性は素晴らしい、なんてよく言いますけど、「SHINE」(輝く)なんて、日本語読みすると「死ね」なんですよ。
浅井:ははは、別に輝かなくたっていいのにね。
深澤:そう、自分から自然発光するはずなんてないのに。そもそも輝こうと思ってできるもんじゃない。結果としてそうなるだけ。それに何でもポジティブに捉えよう、なんて、考えない方がいい。ダメなものはダメ。嫌なヤツは嫌なヤツなんだから。
浅井:嫌われてるなら嫌われたままでいい、と。そして本当に自分のしたいことだけをして生きていけるように、考えていく。本当に自分のしたいことをしていたら、ヒトのことなんてあまり気にならなくなっていくものです。自分のしたいことに注意を向けず、ヒトの思惑をおもんばかったり、優先するから、腹が立つことが出てくるんじゃないかな。
深澤:そうそう。もっと力を抜いて、ボーッとする時間って大切。空いたら空いたまま、埋めようとしないのがいいです。嫌われたら、嫌われたまま。相手に腹が立つからって、SNSに書き込みするんだったら、チラシの裏に思いっきり書いて、気持ちをすっとさせて、丸めて捨てればいいんです。
浅井:大切なことを選びとって生きる、というのは余分なことを捨てる、ということでもあるんですね。
深澤:足すことよりも引き算することの方が難しい。イヤなことはしない、というのがやっぱり基本じゃないでしょうか。
浅井:まさしく。お互いにイヤなことはしないで、女オンチでいきましょう(笑)。
深澤:気持ちよく寝て、気持ちよく出せればいい。これを目指しましょう(笑)。

【joy.netより抜粋】http://www.joystyle.net/articles/225
※本コンテンツの著作権は、株式会社スクーンジャパンに属します。
















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